子会社の欠損金等の活用について

近年会社がM&Aによって他の会社を買収するケースが多数見受けられます。


M&Aのメリットは会社を買収することにより、他社のノウハウや集客力を獲得し、相乗効果が期待できることですが、さらに、買収された会社に欠損金や資産の含み損がある場合には、税務上の減税効果を得ることができます
現行法人税では、各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額は、その法人の所得金額の計算上損金算入することとされ、資産の売却損についても損金算入されます。

欠損金の引継ぎ方法

欠損金等の引き継ぎ方法を検討すると次の方法が考えられます。

①適格合併による引継ぎ

②完全子会社化した後に解散させることによる引継ぎ

③子会社化し連結子会社としての欠損金等に引継ぎ

④子会社化し単体子会社としての欠損金等の引継

①適格合併による引継ぎ

共同要件を満たさない場合、または、合併事業年度開始の5年前から支配関係がない場合等には、欠損金を引継げず、含み損の損金算入もできません。また、引継ぐ側の会社の欠損金の繰り越しも制限される場合があります。

②完全子会社化した後に解散させることによる引継ぎ

子会社の残余財産確定日の翌日の属する事業年度開始の日の5年前、または、いずれかの法人の設立から継続して支配関係がない場合等には引継げません。

③子会社化し連結子会社としての欠損金等に引継ぎ

上記同様5年間又は設立からの継続支配等の要件があり、引き継いだ欠損金は子会社の個別所得のみから控除可能です。控除後になお子会社に所得がある場合には親会社の欠損金を控除することができます。

④子会社化し単体子会社としての欠損金等の引継ぎ

子会社が休眠会社で支配日以後5年以内に事業を開始した場合等には欠損金の引継が制限され、条件によっては支配後に実現した含み損も損金不算入となります。なお事業を継続している会社を買収し、事業内容を追加した場合などで、支配前の事業規模の5倍を超える借入をしない等の一定の要件を満たしていれば、通常通り欠損金の損金算入がきるものと考えられます。

いずれの場合も、5年または設立からの支配関係が要件となっているため、欠損金の利用効果について事前に検討が必要となります。欠損金が引継ぎ制限に該当せず、すべて引き継げる場合においても、引き継いだ欠損金の大半が消滅寸前の古い欠損金であるケースも考えられるため、利用可能期間内にどれくらいの所得が発生し、充当可能かの検討は欠かせないと考えられます


このコラムは、平成25年6月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談下さい。

  

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